2014年3月31日月曜日

【第36回】問題解決したくなる題材かどうか

題材で注意すべき点の2回目です。
ゲームというのはインタラクティブ性の強い娯楽です。
逆に言うと、プレイヤーが自ら積極的に参加しないとちっとも面白くない遊びということです。

たとえば、この原稿を書いているのが日曜日なのでちょうど例に上げたいと思うのですが、「笑点」や「サザエさん」のゲームがあったとしたら、あなたは買いたいと思うでしょうか。

この2つの番組は国民的な知名度があります。しかし、「自分がその世界で活躍してたい!」もしくは「登場人物に成り代わって体験したい!」という気がおきません。
それは、題材の中に「明確に起こしたいアクションがあるか」「解決したい問題があるか」というポイントがないからです。
「サザエさん」は物語や世界観はあっても、「サザエさんとはこのような問題解決をするドラマである」というフックがない訳です。

また、「笑点」にいたっては、そもそも物語や世界観がほとんどないためにそういったフックを作りにくい。
人気のバラエティ番組はときどきゲーム化されますが、売れた作品はほとんどありません。それらの多くは「芸能人がおもしろおかしくチャレンジしたりクイズしたりする」姿を見たいだけで、自分がアクションしたい題材ではない訳です。

つまり、有名な題材であっても、プレイヤーが問題解決したくなるフックのないものは、ゲームとしては非常に厳しいということになります。
その題材に問題解決したくなる要素はあるのか、しっかりと見極めましょう。

ちなみに、「笑点」や「サザエさん」のゲームから問題解決したくなる要素を、その世界観を崩すことなく考えるというのは、これはこれでいい企画力の訓練になります。
いい切り口が浮かんだらぜひ教えてください(笑)

※次回更新は2014/04/02(水)の予定です!

2014年3月28日金曜日

【ヤナセコラム】他人のゲームをどこまでプレイするか?

ゲーム開発者は他人のゲームをどの程度プレイしているでしょう?
正直、これは千差万別で、様々なゲームをやりこんだ末に自分ではまったく別種のゲームを作る方もいれば、自身ではほとんどゲームを遊ばず、自分の理論を積み重ねて素晴らしいゲームを作る方もいます。

私自身は、少なくとも私が作りたいと思っているジャンルに近いものはある程度プレイする派です。標準的には月に40時間程度はゲームプレイに費やしています。これは単純にゲームで遊びたいのが半分、最新テクノロジーによって作られたゲームを勉強しておきたいと考えているのが半分というところです。

中には、体験版やチュートリアルなどをプレイすれば十分に理解できるというベテランの方もいらっしゃいますが、私はあまりそうは思っていません。何故なら体験版などでわかるのは短い時間で買いたいと思わせるための構成であって、長い時間遊んでもらうためのものではないからですね。
単純にインタラクション的なものやグラフィック、その他様々な表現のレベルを把握しておきたいというなら冒頭だけ遊んでも済むかも知れませんが、トータルのゲームデザインを学びたいならそれだけでは不足しています。
ゲームデザインは与えたい体験があり、そのためのゴールと道筋を設定して行われます。途中の過程でどのような道筋でどのようなゴールにたどり着くかを想像する事は出来ますが、実際にどうだったのか、どの程度有用だったのかという検証をするにはやはり最後までプレイするのがいちばんです。

また、シリーズものをプレイする際にも、一本だけプレイするのと何本かプレイするのとでは得られる知見がかなり違ってきます。一つのシリーズの変遷には世の中に求められているものやバックグラウンドの技術など多くの要素が絡んできます。例えばあるゲームの3つ目のシリーズをプレイした時に、要素が少ないのではないかと思ったとして、それが減った結果そうなったのか、それとも前のシリーズから増えていないのかで「何故そうなったのか?」という考察は大きく違ってくるわけです。自分の感覚と世間の評判を比べた時にどの程度違ったか、同じかという事を見極める意味でも有用です。

以上の話は、ゲームを長時間プレイしよう、たくさんやろうという事ではありません。やるからには多くのものを得ないと時間の無駄になってしまうし、やらないならそこで得られたであろう知見よりも多くのものをプレイしない時間で得ないといけない、という話です。

これまで遊んできたゲームから自分が何を得られたのか、もしくはもっとやるべきなのか減らすべきなのか、考えてみるのも良いでしょう!

2014年3月26日水曜日

【第35回】好意的な題材とネガティブな題材

いままで題材の有利・不利をずっと話してきた訳ですが、たとえ有利な題材であっても注意すべき点がいくつかありますので、今回からしばらくその話をしたいと思います。

まずは、好意的な題材とネガティブな題材について。
知名度が高いからといって、その題材が必ずしも好意的とは限りません。
一番わかりやすい例は、よく雑誌などに載っている「嫌いなタレントランキング」。
ここで上位に上がってくる芸能人は、ほとんどの人が知っている有名人ですよね。

また、アメコミなども、映画ブームが来る前は日本人にとってはネガティブな題材でした。
日本のマンガ文化が強すぎて、スーパーマン、バットマン、スパイダーマンなどのキャラクターは多くの人が知ってはいるものの、
「何あの恥ずかしいコスチューム」
みたいな印象が強かった訳です。

このように、有名であってもネガティブなイメージの題材は存在するのです。そして、ネガティブな題材というのは当然ながらプレイヤーは体験したくありません。
ですので、題材論では優位だったBやDの領域であっても、それが好意的な題材かどうかしっかりと見極めてください。

※次回更新は2014/03/28(金) 「ヤナセコラム」の第3回の予定です!ゲーム企画塾第36回は2014/03/31(月)に更新予定です。

2014年3月24日月曜日

【第34回】日常題材から非日常を抽出する

前回のイメージ題材から領域シフトする方法とは別に、Aの「日常」題材の中からBの「非日常」部分をうまく抽出してBの領域にシフトさせるという方法もあります。

この代表例は『ときめきメモリアル』ではないでしょうか。
『ときめきメモリアル』は高校生活という日常題材の中から、「いろいろな女の子にモテモテの高校生活」という、現実にはありえない(ひょっとして千人に一人くらいは現実だった人がいるかもしれませんが)非日常部分を切り出すことでBの領域にシフトさせることに成功した訳です。



以前Aの題材例に上げたサラリーマン(会社員)の生活でも、そこから「嫌いな上司を殴り倒しまくるゲーム」「半沢直樹みたいに倍返しできるゲーム」「OLが生意気な上司を屈服させて奴隷のように扱うゲーム」とかだったら、非日常領域にシフトできる可能性がある訳です。

この手法は、題材として一番強いBの領域にシフトさせることができるだけに、うまくはまるとかなり高い効果を上げることができます。
みなさんもぜひ日常の中に潜む非日常を探してみてください。

※次回更新は2014/03/26(水)の予定です!

2014年3月21日金曜日

【第33回】流行が生み出す題材イメージ

以前、ファンタジーやSFは売れにくいという話をしました。
しかしながら、古くからのシリーズやIP作品でなくても、成功を収めているものも存在しています。

そういった作品は、もちろんゲーム内容や、宣伝・プロモーションがうまいのもあるのですが、もう一つ、作品からふんわりと人気のハリウッド映画や(日本においては)アニメなどの「イメージ」が見えてくるものも多いのです。

たとえば、『マスエフェクト』などアメリカのSFゲームの多くは、あきらかに『スタートレック』や『スターウォーズ』の影響を受けています。
また、巨大ロボットが出る日本のゲームは、やはり富野由悠季作品を始めとするロボットアニメの姿がにじみ出ているものが多いでしょう。

これらの場合の多くは前回話した題材シフトほど直接的ではなく、どちらかというとインスパイア(触発)のレベルではありますが、それゆえにゲームとしてのオリジナリティと、伝えやすい世界観のバランスがうまく取れる場合も多いのです。

このあたりを意識してくると、はやりのコンテンツや映画を見る眼が変わってきます。
なぜそれらが流行して、どういった部分が多くの人に受け入れられているのか。どういった世界観やイメージが一般化しているか。
そこを考えることで、自分たちのゲームが受け入れられるポイントも見つけやすくなるのです。

※次回更新は2014/03/24(月)の予定です!

2014年3月19日水曜日

【第32回】イメージさせる題材で領域シフトを行う

前回まで、題材の問題を切り抜ける手法として、新ジャンルとの組み合わせについて説明してきました。
今回は、もう一つの方法として、題材のうまい部分を抽出したりアピールすることで、題材の領域をシフトさせるという手法について話したいと思います。

例えば『バイオハザード』。
いまでこそ、総合的なホラーアクションになりつつありますが、1作目はゾンビを前面に押し出した、まさにゾンビアクションアドベンチャーゲームでした。
『バイオハザード』は特定のゾンビ映画を原作にしたゲームではありません。しかしながら、ゾンビの潜む館で生き残りをかけるサバイバルホラーの設定から、ゾンビ映画をイメージした人は多かったと思います。

つまり、『バイオハザード』は、もっとも不利なE(オリジナルフィクション)の領域を、2番目に有利なDの領域に事実上シフトさせることに成功させているのです。



ウルトラマンなどの特撮モノをイメージさせる『地球防衛軍』や、ちょっと古いですが映画『トラック野郎』をイメージさせる『デコトラ伝説』などもこのパターンに入るでしょう。

ただ、この手法もやりすぎると危険な場合が出てきます。
ゾンビの例でいえば、以前あるゲームが特定のゾンビ映画をイメージさせ著作権を侵害しているということで裁判になりました。
最終的にはゲームは映画の権利を侵害していないという判決になったのですが、イメージさせる題材は、こういった事態が発生する危険性は常につきまといます。
そういった点も念頭に置いて題材の選択や、アレンジ方法をしっかり考える必要があるかと思います。

※次回更新は2014/03/21(金)の予定です!

2014年3月17日月曜日

【第31回】新ジャンルとの組み合わせの注意点

前回、題材の問題を切り抜ける1つ目の手法として、「人気題材と新ジャンルの組み合わせ」の話をしました。
今回お話する『イナズマイレブン』もこの例になるかと思います。

発売当時もサッカーはあきらかに過当競争題材で、「ファミ通」などを発行するエンターブレイン社長の浜村氏ですら「失敗すると思っていた」参入でした。
しかしながら、他のサッカーゲームにないRPGのシステムと、それに伴ったストーリー性を入れることで成功した訳です。

ただ、1作目の初回本数は大ヒットといえるほどではなかったことは注目すべき点です。
しかし、TVアニメやコロコロコミックのタイアップ等、すぐれたプロモーション戦略でロングセラー化、さらに2作目以降の大ヒットに繋げていったのです。
つまり、TVアニメやマンガといった手に取るコストが安いメディアで「イナズマイレブン」の世界感を伝えることができた(=ゲームでの体験感がイメージしやすくなった)のも大きい訳です。

また、前回例に上げた『真・三國無双』も、本当の大ヒットといえるのは2作目からで、しかも『イナズマイレブン』と同じように、初回型ではなくロングセラー型のヒットとなっています。

なので、安易に新ジャンルやシステムとの組み合わせに頼るのは危険です。
その組み合わせはイメージしやすいか、イメージしにくいならどのような見せ方、伝え方をすれば伝わりやすくなるかを考えて、組み合わせを選ぶことが重要です。

逆に言うと、すでに周知されているジャンルやシステムとの組み合わせでないと効果は薄くなります。斬新すぎるシステムだと何度も言うようにゲームの体験感がイメージできなくなるからです。

※次回更新は2014/03/19(水)の予定です!

2014年3月14日金曜日

【第30回】人気題材と新ジャンルを組み合わせる

題材の問題を切り抜ける1つ目の手法は「人気題材と新ジャンルの組み合わせ」です。

過当競争の題材に、今までと違ったシステムやジャンルと組み合わせることで、新しいゲーム体験感をイメージさせることが可能になるわけです。

例えばコーエーの『真・三國無双』。
コーエーは『信長の野望』『三國志』といった大人向けの歴史シミュレーションで、PCゲーム市場ではトップメーカーでした。
しかしながら、家庭用ゲーム機市場では本格的なシミュレーションゲームはユーザーにとって難しく、PCゲームほどの存在感を示せていなかったのです。

それをひっくり返したのが『真・三國無双』です。
シミュレーション性に拘らず、三国志という人気題材にアクションをくっつけて「三国志の英雄たちが敵をなぎ倒していく」爽快感をアピールすることで大ヒットに繋げた訳です。

また、その前に発売されていた一対一の対戦格闘ゲーム『三國無双』に対し、『真・三國無双』では、一対多に切り替えたことも大きいと思います。
コーエーの強みがあまり活かせてない普通の対戦格闘ゲームではなく、「有名な戦いを1人の武将視点で再現する」という、得意分野である歴史シミュレーション感が活かせるようになったからです。

※次回更新は2014/03/17(月)の予定です!

2014年3月12日水曜日

【第29回】じゃあ、どの題材を選べばいいの?

ここまで有利な題材・不利な題材の話をしてきました。
もう一度、優位な順に番号を打って整理しましょう。


では、実際に企画する際には、一番有利であるというBの題材を選べばいいのでしょうか。
そう簡単にはいきません。

題材として魅力的であるということは、すでに参入者が多い、ということだからです。
正直、Bの領域はすでに過当競争です。野球やサッカー、戦国時代などを題材にしたゲームがいかに多いかは、皆さんもご存じでしょう。

では次に優位なDは?
この領域は権利ビジネスであり、正直お金と権利を獲得できるステータスが重要なので、学生が考える企画の本分ではありません。
(あなたが『ワンピース』や『ガンダム』のゲームを個人的に作りたいと思っても、権利を得られると思いますか?)

A、Eがダメとなると、消去法的にはCの題材しか残っていません。
「多くが知らない」といっても、その幅はかなりあるので、一定のファン層がいるうまい題材を選べば手堅く成功する可能性があるからです。
ただ、この領域もけっこう掘り尽くされていて、そんなにうまい題材が残ってないのも事実です。
可能性があるとすれば、何らかのきっかけでブームになる前にその動きを察知して、そこを狙うあたりでしょうか。
(ゲームの開発期間と、昨今のブーム消費の短さを考えるとこれもなかなか大変なのですが)

「なんだ、これじゃどの題材を選んでもダメじゃないか!」
と思われるかもしれません。
実際、現状がこのような状況なので、今のゲームタイトルは続編と版権モノが溢れている訳です。

しかしながら、まったく手がないわけではありません。
次回からは、それらの手法について話をしていきたいと思います。

※次回更新は2014/03/14(金)の予定です!

2014年3月10日月曜日

【第28回】パズルもやっぱり売りにくい

前回、「学生さんの企画の中で圧倒的に多いのが、ファンタジーRPGとパズルです」という話をしました。
今回はパズルの題材について考えてみたいと思います。

結論からいうと、パズルは多くが世界観的な題材を持ってない場合が多く、せいぜいモチーフレベルでとどまっている場合が多いです。
例えば『テトリス』はペントミノ、『ぷよぷよ』はスライムがモチーフですが、それが題材というレベルにはなっていません。

パズルはどうしても「ゲームルール・システムそのものが魅力のすべて」になりやすいところもあって、本格的な題材と相性が悪いようです。
ゆえにパズルゲームは、題材論的にはやはり不利な選択になりやすいということになります。

ただ、モチーフレベルでも、それがゲームをイメージできる手助けにはなるので、ゲームのイメージにうまく合うものがあれば、いいモチーフを積極的に選んできたいものです。

アドベンチャーゲームと合体させることで世界観をうまく導入した『レイトン教授』、それまでソーシャルゲームで人気だったカード育成系ゲームにパズルを取り入れることでファンタジー題材とつながりやすくした『パズル&ドラゴンズ』といった工夫例も参考になるでしょう。

また、パズルゲームはシステムの特長がシンプルな分、他のジャンルに比べれば企画書で内容をアピールしやすい、サンプルのプログラムが作りやすいといった利点もありますので、もしパズルゲームを企画で考えている学生さんは、題材の不利をどう覆すか、いろいろ考えてみてください。

※次回更新は2014/03/12(水)の予定です!

2014年3月7日金曜日

【第27回】RPG企画書の欠点

前回の続きです。

学生の企画の中で圧倒的に多いのが、ファンタジーRPGとパズルです。
しかしながら、ファンタジーRPGの企画で、「これは!」と思ったことは残念なことにほとんどありません。

そもそも、「ファンタジー」という題材、「RPG」というジャンルを、何の疑問もなく選択しすぎです。そこに必然がありません。
多くの学生さんは、自分が感動したファンタジーRPGがあるから、その体験感で選んでいるだけのように思えます。

また、企画書のほとんどが、細かいシステムの差異であったり、世界観の違いであったり、すでに他の作品でも試されている内容であったり(「レベルアップがない!」をアピールした企画書を今までに何回見たでしょうか)で、正直企画としてまったく差別化されていないものばかりです。

すでに山のようにあるファンタジーRPGを、さらに1本世に問う訳ですから、他の題材やジャンルに比べてより差別化が必要なはずです。
しかし、「ファンタジー」は前回話したように題材として弱く、「RPG」は様々なシステムがすでに試されています。

あなたがもしファンタジーRPGの企画書を書こうとしているのなら、そういった問題点をもう一度検討した上で、それでもファンタジーRPGでなければならないのか、既存作品と一言で差別化できるポイントがあるのかをしっかり考えてください。

※次回更新は2014/03/10(月)の予定です!

2014年3月5日水曜日

【第26回】ファンタジーRPGは売れるという幻想

さて、前回で題材のタイプによる有利・不利を説明しました。
では、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といったファンタジーRPGはどの領域に入るでしょうか?



これらの作品は新規のファンタジー世界を元にしたオリジナルフィクションですから、実は題材論だけで考えると最も売りにくいEの領域になるのです。
「おかしいじゃないか、ドラクエやFFは何百万本も売れてるじゃないか!」
という人も多いかもしれません。
しかしながら、ドラクエやFFは、何と言ってもまだゲーム性がセールスポイントになった時代からの、シリーズとしての実績があるのです。

RPGというジャンルは「やればおもしろい」典型的なシステムを持っており(これについてはいつか触れたいと思います)、ゆえに初期からの有名タイトルはプレイヤーの中に「新作もおもしろいにちがいない」という「おもしろそう」感を生み出すことに成功しているのです。

近年の新作RPGはなかなか厳しくなってきています。
例えば、昨年2013年の家庭用ゲーム機市場で考えると、シリーズ物でも版権物でもないルーキータイトルで、ある程度の売上げを上げたRPGは「妖怪ウォッチ」くらいではないでしょうか。

「最近のソーシャルゲームでもファンタジーRPG(もしくはRPG風)のヒットが多いのでは?」
と思っている人もいるかもしれません。
しかしながら、ソーシャルゲームも、ゲームシステムのおもしろさが口コミで広がる時代はほぼ終わり、圧倒的な広告とプロモーションで差別化せざるをえなくなってきています。

ゲーム内容がよくわからないファンタジー系ソーシャルゲームの、大量のTVCMや屋外広告を見た人も多いと思います。
よく言えばイメージ戦略、悪く言えばCMや広告ではゲーム内容の差別化がアピールできない題材であるが故に、あのように大量投入して認知度を上げなければならないということなのです。

※次回更新は2014/03/07(金)の予定です!

2014年3月3日月曜日

【ヤナセコラム】教育とチュートリアル

ゲームデザイン研究者の簗瀬です。

前回に引き続き、教育という文字がタイトルに入っています。チュートリアルというのは元々個別指導を意味しており、ユーザーそれぞれに対してゲームの操作方法やルールを教える事を示しています。

チュートリアルというのは非常に重要です。何故なら、ゲームはある程度の要素の組み合わせによって面白さを作っています。する事が決まっており、必ずその通りに出来るのならそれは遊びではなく作業になってしまうので、様々な要素を投入する事によって少しずつ違った局面を作り、判断と実行を繰り返してもらいます。そして完全に正しい判断と実行が可能になった段階、もしくはその少し前に新しい要素を投入し、作業になる事を防ぎます。

この新しい要素を学習するうえで必要なのがチュートリアルです。
このチュートリアルはダイアログの文字によって為される事が多いですが、例えばレベルの構成、出て来る敵の順番などによってさりげなく学習を促進していることも多々あります。良く出来たチュートリアルほど目立たない、もしくはよく出来たデザインのルールとレベルにおいてチュートリアルは不要であると言えるでしょう。

さて、このチュートリアルに関する知見はなにもゲームだけに必要なわけではありません。例えばスマートフォンなど電子機器の操作や、駅の自動販売機、カーナビゲーションシステムなどおよそインタラクティブな操作が求められるデバイスやサービスなどに関して様々な局面で求められます。

細かい事例を挙げていくと、それだけで本が書けてしまうので、ごく基本的ないくつかの事だけ憶えておいて下さい。

・情報は必要な時に必要なものだけを出す

多くの情報を出すと憶えきれなくなりますし、忘れてしまいます。
必要と感じていない情報が頻繁に出て来ると、チュートリアルに対する注意も得られなくなってしまいます。何もかも保険として画面で説明する事は決して親切ではないのです。

・まず必要があり、その後に教える

前述したように、ユーザーに何かを教えるにはその情報を欲しいと思ってもらう必要があります。例えばゲームを起動し、最初の敵が自分を攻撃してきたら相手を倒したいと思うのが普通ですよね。始めた瞬間にコントローラーのボタン配置を出しても、その時に見て憶えてくれるユーザーは稀です。次点は、最初にボタン配置図の出し方を憶えてもらい、知りたいと思った時にいつでも参照してもらえるようにする事です。

・チュートリアルは設計の不備を覆せない

チュートリアルは、ゲームデザインやレベルデザインと一体で、作られたレベルに対して後からチュートリアルを付け足すと、ゲームの流れを止めてしまったり、ユーザーのストレスを増大させたりしてしまいます。優秀なゲームデザイナーはルールや操作を決める際に、どのようなプロセスでそれを教えていくか同時に考えるものです。


チュートリアルを学ぶには、既存のゲームでどのようにルールや操作を教えているのか学ぶのがいちばんです。ただし「良いチュートリアルは見えない」ので、振り返ってあれは良かったと感じる事が多いかも知れません。振り返ってみて、操作やルールに関するストレスを感じていないようだったら、最初からやり直して確かめたり、実況動画などを見てみるのが良いでしょう。