2014年1月31日金曜日

【第14回】「おもしろそう」はゲームの中に入れるしかない

前回の続きになります。
「おもしろそう」と思わせる手段はさまざまな形があります。例えば大々的な広告やプロモーションといったものはその代表的なものです。
しかしながら、学生の企画書でその領域をカバーすることはできません。

収益という概念のない学生の企画書に「広告に1億円かけて認知させます」と書かれても、「その1億円どうやって調達するの?」と言われておしまいです。
同じようなミスで「大ヒットマンガのゲーム化」「人気声優多数!」「有名キャラデザイナーを起用」等々もありますが、自分が責任をもって実現できないものは企画書に書かないようにしましょう

また、シリーズ物はゲームシステム側から「おもしろそう」の喚起がしやすいもっとも効果的な手法です。
「前作がおもしろかったから、今回もおもしろいだろう」
という期待感を、ゲームをプレイさせなくても煽ることができるからです。
だからこそ、市場にこんなにたくさんシリーズ作品が溢れるわけです。
しかし、これも新規の企画では当然活用できません。

以上のことから、学生の企画書ではゲーム企画案そのもの中に「おもしろい」だけでなく、「おもしろそう」も入れこむしかありません
(プロの現場においても、予算のないプロジェクトや中小のパブリッシャー作品はここを考えることが重要です)

すぐれたゲーム企画の理想は「おもしろい」と「おもしろそう」の両輪が揃っている状態です。
繰り返しになりますが、「おもしろそう」をアピールできずに手にとってもらえないゲームは、いくらおもしろくても、それを楽しんでくれるチャンスが生まれないのです。

※次回更新は2014/02/03(月)の予定です!

2014年1月29日水曜日

【第13回】「おもしろい」と「おもしろそう」

第10回で「おもしろさを言葉として(しかもそのゲームのことをまったく知らない相手に)一言で伝えるのはとても難しい」という話をしました。

あなたがゲームシステムを絶賛しているRPGがあるとします。
しかし、そのゲームシステムのおもしろさを、プレイしていない人に伝えるのはなかなか大変です。
「ファイナルファンタジー」や「ドラクエ」シリーズくらいになれば、ゲーム専門誌で丁寧にシステムを紹介してくれるかもしれませんが、そもそも今はゲーム専門誌をまったく読まないユーザーの方が多いのです。

また、あなたが感動して涙を流したADVゲーム。
これも、ゲームをやらなければその感動を伝えるのは非常に難しいでしょう。

「やってみたらおもしろい」要素は伝えにくいのです。
そうなってくると、まずゲームを手にとってもらうには、「やる前からおもしろい」と思わせる要素、すなわち「おもしろそう」と感じさせるフックが重要になってきます。

「おもしろそう」のないゲームはユーザーの「遊んでみたい」という期待感を煽ることができず、まずゲームを手にとってもらうというファーストステップからつまずいてしまい、結果として売れないゲームになりがちなのです。

※次回更新は2014/01/31(金)の予定です!

2014年1月27日月曜日

【第12回】ターゲットユーザーを広げすぎない

前回、ターゲットユーザーを明確にする方法の1つとして「この企画が必要でない人」をイメージするという話をしました。
この方向から考える利点はもう一つあって、それはうっかりとターゲットユーザーを広げすぎるのを防げるということです。

石川も昔よくやらかしたのですが、目標本数の根拠を求められて、ついターゲットユーザーを広く設定し、本数が達成しやすくなるかのようなイメージを狙ってしまいます。
しかしながら、「初心者からベテランまで」「子供から大人まで」「男女問わず」といった言葉は、一見広い層をカバーできているようで、その実ターゲット層をイメージできていないと告白しているようなものです。

そして、この広い層狙いはゲームのおもしろさまで悪影響を与えてしまうことが多いのです。
広い層を狙ってつい色々な要素を入れすぎたり、そのゲームの特長であるはずの尖っている楽しさが削られたりする。

なので、石川がターゲットユーザーを考える場合は、これも前回お話した「予約までして買ってくれる人たち」を中心にイメージします。(ソーシャルゲームだったら「事前登録してくれる人たち」でしょうか)
いわゆる「コアターゲット層」です。人気シリーズタイトルでも無い限り、このコアターゲット層が最初に飛びついてくれるかどうかでそのゲームのスタートダッシュは決まります。現在のように、新作タイトルが山のように出ている状況下で、スタートダッシュができなかった場合、その状況をひっくり返すのは非常に厳しくなります。
ですので、しっかりイメージしてターゲット像を絞り込みたいところです。

「そんなこと言っても、コアターゲット層しか書かなかったら、市場性が狭い印象を与えてしまうのでは?」
という不安になりそうだったら、そこから広がる可能性のあるサブターゲット層も併記します。ただし、コア層とは明確に分けて書きます。

こうすることで、ゲームのアピールポイントやおもしろさを考える際に、まずコアターゲット層にとって魅力的かどうかをしっかりと意識できるのです。

※次回更新は2014/01/29(水)の予定です!

2014年1月24日金曜日

【第11回】ターゲットユーザーの考え方

前回の続き、企画のたった2つの本質の②
「そのおもしろさをわかってくれる人は誰か」
いわゆるターゲットユーザーについてです。

②でよく失敗するのは、題材が好きな人=おもしろさを分かってくれる人、と誤解してしまうことです。

たとえば、学生にサッカーゲームのターゲットユーザーを書かせると「サッカーが好きな人」と書く人がとても多い。でも、サッカーが好きな人が全員買ってくれるのなら、苦労はしません。

石川は『機動戦士ガンダム』が大好きですが、ガンダムゲームは数えるほどしか買っていません。
なぜならばアクション性の高いゲームが苦手で、その時点でほとんどのガンダムゲームがそこで脱落してしまうからです。
もし、私のようなユーザーをターゲットとしたいのなら、
「アクションゲームが苦手なガンダムファン」
とでも書かないといけないでしょう。

ターゲットを明確にする方法としては、石川は以下の3つをよく使っています。

1つ目は「このゲームを予約してまで買ってくれたり、朝一番に買いに行ってくれたり、ソーシャルゲームなら先行登録してくれるような人たちはどんな人だろう」とイメージすることです。

2つ目は企画の問題解決から考える方法です。
企画が問題を解決する以上、その問題を抱えている人たちというのが必ずいます。それはどんな人たちなのか、その方向から絞り込んでいくのです。

3つ目は「このゲームをおもしろく思わない人」から考えていくやり方です。
このゲームをおもしろくないと思う人、やろうとしない人、ターゲットとしていない人というのはどういう層かを列挙していって、消去法的にそこに当てはまらなかった人がターゲットユーザーということです。

※次回更新は2014/01/27(月)の予定です!

2014年1月22日水曜日

【第10回】ゲーム企画の本質はたった2つ

ゲーム企画で抑えなければならない本質は、実はたった2つしかありません。

①このゲームの何がおもしろいか(差別性)
②そのおもしろさをわかってくれる人は誰か(市場規模)

この2つがきちんとできていれば、企画は完成しているも同然なのです。
しかし、それがプロでもなかなかできません。私もいつも失敗ばかりでした。(いや、今でも?w)

①はよく言われるところの「ゲームのおもしろさ」です。しかし、そのおもしろさを言葉として一言で伝える(しかもそのゲームのことをまったく知らない相手に)のはとても難しい。
さらにその「おもしろさ」は以前お話した、ユーザーの期待を解決するものでなければなりません。
逆に言えば、一言で説明できない面白さは、ユーザーに伝わりにくく、手にとってもらえない可能性が高いということです。

そしてもう1つ、「差別性」の難しさです。ここでの差別性とはライバルゲームとの差別だけではありません。ありとあらゆる娯楽との差別が要求されます。

例えばペットを飼うゲームの企画を考えた場合、差別すべきは他のペットゲームだけでなく、生のペットそのものも考慮しなければならないのです。
「ゲームでやるより実際にペット飼った方がいいじゃん」
になっては、いくら他のゲームとの差別化ができていても、その企画は失敗ということです。

②については次回に続きます。

※次回更新は2014/01/24(金)の予定です!

2014年1月20日月曜日

【第9回】相手が変われば企画書も変わる

「企画書とは説得である」の話の続きです。

みなさんが誰かを説得しようとする場合に、同じ内容だからといって、相手がだれでも同じ言い方をすることはないですよね?
例えば、父親とおばあちゃん、先生とクラスメート、単なる知人と親友、相手によって同じお願いでも言葉遣いやアプローチ方法が変わっていると思います。

ところが、ゲーム企画書を就職活動で準備する場合には、まったく同じ企画書をそのまま複数の会社に送っている人はけっこういるのです。

例えば、対戦格闘ゲームの企画書を作る場合に、それを格闘ゲームの老舗メーカーに送る場合と、格闘ゲームを出したことのないメーカーに送る場合ではまったく意味が変わってきます。

格闘ゲームの老舗メーカーに送る場合は、今まで出してきた格闘ゲームとどう違うのか、とういう点が重要になってきます。
一方、格闘ゲームを出したことのないメーカーに対しては、「なぜあなたの会社にわざわざ格闘ゲーム企画を出したのか」という視点での説明も重要になってきます。

以前の話の繰り返しになりますが、就職活動用の企画書は「俺のすばらしいアイデアを見ろ!」ではありません。
相手の会社に合わせて内容を修正し、適切な「説得」を目指しましょう。

※次回更新は2014/01/22(水)の予定です!

2014年1月17日金曜日

【第8回】学生にとっての「よい企画書」とは?

前回までに、
「企画者は直接的には売り込み先の問題解決を企画として提案するが、その企画を達成するためにはユーザーの問題解決も満たさなければならない」
という話をしました。
そして、ゲーム会社の場合の売り込み先への一般的な説得とは
「このゲーム企画を通してくれれば、かかる経費を差し引いてもあなたの利益になりますから、当面の時間とお金を出してください」
であるという話も以前しました。

しかし、学生の企画書は開発と売上げを前提としたものではありません。
ですから、学生の企画書にはプロの企画書では一般的な「開発コスト」や「目標本数」は記載されません。
では、学生が就職に書く企画書は、ユーザーへの問題解決だけ考えればいいのでしょうか?

いえ、違います。学生の企画書もゲーム会社に対する説得が存在するのです。
それは就職したいゲーム会社に対して
「私を雇ってくれれば、いずれ給料以上の利益を会社にもたらしますから、ぜひ雇ってください」
自分の能力や将来性をアピールして、雇用を「説得」することです。

どう考えても費用対効果の見込めない企画や、ターゲットユーザーが見えない企画、題材やシステムに対して適切でないプラットフォームの選択などは、ゲーム業界に対する視点が甘いと思われ、雇用するにはスキル不足と判断される場合も出てきます。
ですから、企画書に開発コストや目標本数の項目はなくても、実現性や市場性という視点でも企業側がチェックすることは多いのです。

ただ実現性や市場性と、アイデア部分とで、どちらをどのくらいの比率で重視するかは、各会社によってかなり違いがあると思います。
会社によっては「実現性は問わない」と明言している所もあります。募集要項にはそういった情報も書かれている場合が多いので、しっかりと目を通しましょう。

いずれにしても、学生が書く企画書で企業に対する問題解決は、プロのようなレベルで記載する必要はないですが、「実現性」「市場性」という部分をしっかりイメージすることで、リアリティが増すのは確かですし、プロの現場に近い企画書に仕上がっていきます。

『ゲーム企画塾』の目標は「就職活動に役立つワンランク上の企画書を書けるようになる」ですが、学生さんには就職だけの小手先な技術よりは、就職後も実践で役立つ基本的な技能を身につけてほしいと考えています。
ですので、今後も実現性や市場性を意識しながら話を進めていきたいと思います。

※次回更新は2014/01/20(月)の予定です!

2014年1月15日水曜日

【第7回】問題解決の相手は誰?

企画の本質とは問題解決である、と以前言いました。
では、問題解決すべき相手は誰でしょうか。
「そんなのユーザー(お客さん)に決まってるでしょ?ユーザーの問題を解決するゲームを作ればいいのでしょ?」

たしかに間違ってはいません。
ですが、その前に問題解決しなければならないもう1つの相手がいます。
それは、企画の売り込み先(もしくは依頼主)です。
わかりやすくいえば、会社の役員であったり、発注元であったり、パブリッシャーであったりです。

以前お話したように、企画書は説得のためのツールです。そして、その説得力をつけるために重要なのは、説得相手である企画の売り込み先への「問題解決」ということになります。

売り込み先の解決すべき問題とは、たとえば
「来年度中に×億の利益を達成したい」
だったり、
「人気シリーズの売上げが落ちてきているのリニューアルして前作比150%の売上げを上げたい」
だったり、
「女性向けゲーム市場に参入して、3年以内に黒字化したい」
だったりするわけです。

この問題解決にはどこにもユーザーはいません。
しかしながら、ゲーム企画の問題解決手段が、ほぼユーザーからの支持(多くは売上げ)にかかっている以上、当然ながらユーザーの問題解決も行わない限り、成功する企画にはならないのです。

整理すると、ゲーム製品の企画においては
「企画者は直接的には売り込み先の問題解決を企画として提案するが、そのためには、ユーザーの問題解決も満たさなければならない」
ということになります。

※次回更新は2014/01/17(金)の予定です!

2014年1月13日月曜日

【第6回】「よい企画書」は「よい企画」である必要はない?

前回は「よい企画」について話ました。
では「よい企画書」とは何でしょうか。
それは「企画書は何の目的で書かれるのか?」を考えれば分かります。
端的に言えば、企画書の目的は「説得」です。

企画の「問題解決」にかかるコストを差し引いても、提案相手(会社の上司だったり、パブリッシャーだったり)にとって利益になる(多くの場合は金銭的な)ということの「説得」が企画書の目的なのです。
わかりやすく言えば、「このゲーム企画を通してくれれば、かかる経費を差し引いてもあなたの利益になりますから、当面の時間とお金を出してください」と説得するためのツールが企画書ということです。

ということは、極端な話、企画の問題解決そのものがまるで実現性のないものや的外れなものであっても、説得に成功しさえすれば、企画書としての目標は達成されたことになります。
実際、TVゲームがバブルだった頃(ファミコンやスーパーファミコンの全盛期)にはたくさんの異業種がパブリッシャーに参入したため、実現性のない企画や問題のある企画であっても判断する人が目利することができず、もっともらしい企画書にだまされたという例もあったようです。

ですが、もちろん学生さんたちはこのようなことを考えてはいけません。
きちんと「よい企画」を考え、それを「よい企画書」に仕上げてください。
ただ、「企画=問題解決」「企画書=説得」という違いがあり、それぞれで要求される内容や技術は異なるのだということはしっかりと頭に焼き付けてほしいと思います。

※次回更新は2014/01/15(水)の予定です!

2014年1月10日金曜日

【第5回】「よい企画」と「よい企画書」の違い分かりますか?

.突然ですが、「よい企画」と「よい企画書」の違いわかりますか?
この質問は、言い換えると「企画とは何か?」「企画書とは何か?」という問いかけでもあります。
読むのを一端やめて、ちょっと考えてみてください。

まずは「企画とは何か」から考えていきましょう。
企画とは、問題のある「現状」があり、その一方でこうならいいなという「期待」がある。その「現状」と「期待」の間を橋渡しする「解決方法を考えること」です。

例えば、2013年の日経トレンディヒット番付1位となった「コンビニコーヒー」を例に挙げてみましょう。
  • 現状・・・缶コーヒーでは味気ないけど、手軽さと値段を考えると仕方ない
  • 期待・・・でも安く手軽にいつでも本格ドリップコーヒーが飲めると嬉しい
  • 問題解決・・・どこにでもある24時間営業のコンビニに本格ドリップマシンを導入することで、手軽でリーズナブルな値段のドリップコーヒーを提供する
という「問題解決」でヒットした訳です。

そこであなたは思ったかもしれません。
「日用品とかと違ってゲームって楽しむもので、問題解決とかとは関係ないんじゃない?」
と。でも、例えば
  • 喧嘩もできないけど本当はすかっと暴れてみたい「現状」と、格闘技の達人になってみたいという「期待」の「問題」を解決する
    格闘ゲーム
  • その球団が好きだけど今の監督の指揮が気にくわない「現状」と、その球団の監督になって自分の理想のオーダーや指揮をしたいという「期待」の「問題」を解決する
    プロ野球運営ゲーム
というように、ゲーム企画においても、やはり本質は「問題解決」なのです。
ただ、ゲームの場合は、その「期待」がコーヒーの時ほどには目に見えにくいというだけです。(上の例は比較的わかりやすい内容を示しましたが、時にはユーザー自身が自覚してない場合も多々あります。)

つまり「よい企画」とは、「現状」と「期待」の間に横たわる「問題」を橋渡しする「すぐれた解決方法」であると言えます。

※次回更新は2014/01/13(月)の予定です!

2014年1月8日水曜日

【第4回】プランナーはそんなに企画書を書かない?


プランナー志望の学生は、ほとんどの場合、就職活動で企画書の提出を求められると思います。
しかしながら、もしプランナーとして就職出来た場合、実際のゲーム開発の現場で本当の企画書を書くことは実はあまりありません。

なぜなら、企画書が通るかどうかは、その会社や部署の命運を担っており、そのような重要な書類は、責任のあるリーダー的な人間が書く場合が多いからです。
(ただし、会社によっては企画書コンテストなど、積極的に企画書を書かせようとする社内イベントが行われることもあります。これも「本当の」企画書を書く機会が限られている対策かなと思います)

また、もし企画書を書くことがあっても、ゲーム開発全体の作業量からいくと、その割合はかなり少ない場合がほとんどです。
企画書を書く人間が開発全体に参加した場合、前回書いた企画パートと実務パートのような仕事が発生するのですが、圧倒的に実務パートの作業量の方が多いのです。

では、なぜ就職活動に企画書が求められるのでしょうか。
それはプランナーにまず要求される能力が、
  • すぐれたアイデアを発想するだけでなく、その発想を全体の中できちんと位置づけ、具体的にシステム化できること
  • 市場においてきちんと差別化・ターゲット化できる視点で考えること
  • 他人に説明するために整理し、まとめ、伝達すること
だからです。
その能力を比較的簡単に計ることができるツールが企画書という訳です。

もちろん、企画書という紙切れ1枚でその人の能力のすべてを見抜くことはできませんけど、少なくとも上記のように要求される能力がある程度あるかどうかは判断できます。
ですので、一次選考として企画書は、希望者を絞り込む有用なツールなのです。

別の言葉で言えば、就職活動用の企画書は「俺のすばらしいアイデアを見ろ!」ではありません。
上記のような能力が試されている試験問題のようなものだと考えてください。

※次回は2014/01/10(金)更新の予定です!

2014年1月6日月曜日

【第3回】プランナーは実は広き門?

前回の「プランナーは狭き門」について、
「コンシューマー系の大手パブリッシャー/デベロッパーの正社員新卒採用に限った話ではないか?」
という指摘をいただいたので、ちょっと予定を変更して今回補足したいと思います。

たしかに、学生さんが自分の大好きなゲームを出している大手パブリッシャー・デベロッパーへの新卒就職にこだわるあまり、道を自分たちで狭めていることがけっこうあります。

たとえば、数年前からのソーシャルゲームのブームでは、ソーシャル系の会社がプランナーを大量に採用しました。
そろそろソーシャル系も採用を絞ってきているという話も聞きますが、それでも今までにない就職の道が広がっている訳です。

ゲーム会社は本当にたくさんあります。東京とかでなくても、例えば石川が住んでいる福岡でも、毎年のように新しいゲーム会社さんと出会います。
大手や自分の好きなゲーム会社に拘らず、自分の実力と方向性を見据えた上で、いろいろな会社にトライしてもらいたいと思います。

一番まずいのは、就職浪人することです。
ゲーム業界は、何よりも実績が評価されやすいところです。また、日本の産業の中では、もっとも転職しやすい業種の一つでしょう。
そのためには、まずどのような形でもいいからゲーム業界に入る。アルバイトから正社員になった人はたくさんいます。営業や総務、はては倉庫業務からプランナーになった人も知っています。(もちろん、「プランナーになりたい!」という強い意志と努力の賜物ですが)

その上で、今いる会社が自分の方向と合わないようであれば転職も考える。
どんな形であれ、3年くらいきちんと仕事をしていればゲーム会社で働いた実績は、プラスになります。

また、ゲーム業界を知るという意味でも、インターンは機会があればぜひ体験してほしいと思います。
インターンから就職につながった人もけっこういますし、そもそも外から見ていてよくわかりにくいゲーム会社の中身を体験できるだけでも、自分の就職を考える上で、とても役に立ちます。

ちょうど、福岡市と地元のゲーム会社が協力して実施される「第16回FUKUOKAゲームインターンシップ」が募集中(1/17必着)ですので、お勧めします。県外の人には宿泊費補助などもありますよ!(と、さりげなく地元アピール)



※次回は2014/01/08(水)更新の予定です

2014年1月3日金曜日

【第2回】プランナーは狭き門

最初に脅すようで申し訳ないのですが、新卒でのプランナーは狭き門です。
1つは絶対的にプランナーの枠が少ないこと。
ゲーム関係の仕事で求人が多いのは、プログラマー、デザイナー、プランナーですが、その3職の中も、プランナーは圧倒的に必要な人数が少ないのです。

ゲームのスタッフロールなどでも、プランナーに対してプログラマーやデザイナーが何倍も多いのを目にすることは多いと思います。。
つまり、単純な枠レベルで考えると、就職においてもプログラマーやデザイナーよりも何倍も厳しいということになります。

もう一つは、プランナーの要求されるスキルが、新卒ではなかなかハードルが高いという点です。
プランナーは会社やプロジェクトによって仕事内容がかなり違いますが、大きくは企画パートと実務パートに別れます。

企画パートでは
  • 発想力
  • 構成力
  • マーケティング
  • ドキュメント作成
  • プレゼンテーション
  • コスト意識
実務パートでは
  • メカニクスデザイン
  • レベルデザイン
  • UI
  • スクリプト作成
  • チーム管理
  • コミュニケーション
  • スケジュール管理
  • シナリオ作成
  • プログラムの基礎
  • CGの基礎
  • 映像センス
  • 英語力
等々の、幅広い能力や知識が(常にすべてではないですが)要求されます。

特にディレクターやメインプランナーといった、ゲーム全体の完成度に責任を持つ人間はゲーム製作全体に精通していることを要求されるため、ゲーム製作の経験が乏しい新人ではなかなか対応できません。

それゆえに、プランナーは新卒で取らない会社や、プログラマーやデザイナーからプランナーの才能がある人間をシフトさせる場合も多いのです。

もちろん、新卒でプランナーとして就職できている人もたくさんいますので、悲観する必要はないですが、
「自分はプログラムもできないし、絵も描けないけどゲームの仕事がしたいから」
程度の意識でプランナーを目指しても、なかなかきびしいということは理解いただきたいと思います。

※次回は2014/01/06(月)更新予定です。

2014年1月1日水曜日

【第1回】ゲーム企画書作成の2つのアプローチ方法

『ゲーム企画塾』当面のアプローチ方法は「題材やターゲットユーザーを決めて企画書を作る」というものです。
それに対して「おもしろいゲームシステム(メカニクスデザイン)を考えて、それを企画書にまとめる」アプローチ方法もあります。というか、こちらの方が一般的かもしれません。

ではなぜ『ゲーム企画塾』が「題材やターゲットを決めて企画書を作る」方向からスタートするかというと、大きく2つの理由があります。

1つはゲームシステム方向からのアプローチについては、日本の有名ゲームデザイナーを含め数多くの書籍や研究成果が存在するということです。
そしてもう1つの理由は、多くの学生の企画書が、本来のゲーム企画書ではなく、ゲームシステム概要書のようになっているという点です。

これはゲームシステムから考えた弊害だと思うのですが、そのシステムの説明を一生懸命しようとするあまり、どんどん企画書から離れていってしまうことが多いようなのです。
そこで、学生があまりやっていない方向からゲーム企画を考えてもらうことによって頭を切り替え、より広い視点でゲーム企画書を書けるようにしたいというのが、『ゲーム企画塾』の考え方です。

ただ、アプローチの起点が違うだけで「おもしろいゲームシステム」「題材」「ターゲットユーザー」は三位一体のものです。
題材やターゲットから始めるからといっておもしろいゲームシステムを考えなくていいという訳ではありませんので、誤解しないでくださいね。