2014年2月10日月曜日

【ヤナセコラム】学習、教育、そしてゲーム

皆さんこんにちは、ゲームデザイン研究者の簗瀬です。
耳慣れない職業かとは思いますが、例えばこんな研究発表をしています。
https://www.youtube.com/watch?v=Ch7xv0zbEIE

今回からときどき、ゲームデザインを少し外から眺めるような視点でコラムを書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

さて、タイトルの件ですが、昨今シリアスゲームやゲーミフィケーションなどという言葉を耳にする機会が増えてきたのではないかと思います。
が、ここで触れたいのはそういった事とはまた少し違う話題です。

すべてのゲームにはルールがあります。
ゲームをプレイする際、皆さんはどうルールを知り、理解し、使いこなせるようになっているでしょうか?

誰かに聞く、説明書を読む、他人のプレイを見るなど様々な方法があると思いますが、自分で試し、成功と失敗を繰り返してルールを理解し、活用出来るようになっていくのが普通ですよね。

例えば……

・敵を1体倒すごとに自分のエネルギーを貯める事が出来ます
・自分の攻撃を敵に当てると敵のHPが減ります
・エネルギーを貯めると必殺技を使う事が出来ます
・5体に一体、他の敵のHPを回復させる敵が出ます
・自分のHPがゼロになるとゲームオーバーです
・相手のHPがゼロになると敵を倒す事が出来ます
・敵を3体倒すと1体強い敵が出ます
・相手の攻撃を受けるとHPが減ります

などと説明されると、一つ一つは単純で丁寧な説明があったとしても要素が重なる事でどう立ち回れば良いのかわからなくなってしまいます。

全ての要素が揃うと奥深い知的かつエキサイティングなゲームプレイが楽しめます……などと銘打ってもそれが理解出来る前にくじけてしまったら何にもなりません。

そこで多くのゲームでは例えば
・こちらを攻撃して来ない敵(または障害物)が出る
・攻撃を当てると敵を倒せると理解出来る
・敵が攻撃してくる様になる
・回避する、離れるなど攻撃を避ける様を教える
・少し強い敵が出る
・技を活用して大ダメージを与える術を教える
などというように少しずつ新しい要素を増やし、増やした要素を駆使しないと先に進めないようにデザインするわけです。

こういった手法はゲーム特有のもの、というわけではありません。
例えば学校の教科書は小学校1年生の数の数え方や足し算から始まって、何年もかけて微分積分など難しい要素までステップアップしていきます。そして、その過程でテストなどを挟み、そのために勉強してもらって出来るだけ多くの生徒が教えた事を理解した状態になっているよう設計されています。

革新的で奥深いゲームデザインが出来たとしても、それを理解出来る人間にしか伝わらなかったら非常にもったいない結果になります。そのため、ルールを考えたら同時に最高に面白いという状態までどうやってプレイヤーを誘導していくか、という事を考えなければなりません。
そしてそれを行うのは説明書や口頭での解説ではありません。ゲームは遊びによってルールを教え、積み重ねて遊びをさらに面白くしていくよう設計されています。

皆さんもゲームを遊ぶ際、それを意識して情報が出て来る順番、自分の出来る事や障害がどのように複雑になっているか、是非観察してみて下さい。

※次回更新は2014/02/12(水)の予定です。『ゲーム企画塾本編』第2章「題材からの企画書・理論編」の開始です!